2025.11.4

小さな子どもと保護者が安心して楽しめる群馬県高崎市のエコラボカフェ。運営するのは県内を中心に環境保全事業を展開する株式会社群成舎だ。カフェではごみを出さない“ゼロウェイスト”という言葉を核に食事やスイーツを提供し、マルシェやワークショップといったイベントを実施している。2025年10月でオープンから丸4年を迎えたエコラボカフェのこれまでの歩みを聞いた。
エコラボカフェ店長 石田 環(たまき)さん
ウェディングプランナーを経て2019年に株式会社群成舎に入社。入社6年目を迎え、リサイクルできるものは何でもリサイクルする習慣が身に付いたという。社長室に所属し、エコラボカフェ事業全体を統括する。

「お店のコンセプトは“未就学児をもつ子育て世代がうれしいカフェ”」と話すのは、株式会社群成舎 社長室の石田環さんだ。同社が2021年10月に立ち上げたエコラボカフェは平日の昼間から小さな子どもを連れたお客さんでにぎわっている。
カフェは群成舎ANNEXビルの一階にあり、東京日本橋から埼玉、群馬、新潟をつなぐ国道17号線に面している。企画段階では便利な立地を活かしコワーキングスペースにする構想もあったと明かす。
「子育て世代も多い社内でアンケートをとったところ、子どもを連れていける飲食店といえばファミリーレストランくらい、という声が多くありました。こういった声や近隣に類似施設もないことから、キッズスペースを当初の3倍近くに広げた現在のレイアウトに決まりました」。
店内の中央にはキッズスペースが置かれ、それに沿うように背の低いカウンターテーブルが配置されおり、保護者は子どもが遊んでいる様子を見ながら、食事や会話を楽しむことができる。また、このエコラボカフェでは子どもがいることが日常だ。子どもがぐずったり泣いたりしても、保護者があまり気兼ねすることなくリラックスして過ごすことができると好評だ。
「オープンから4年経ち、その間に学生や社会人の利用を促す施策も実施しましたが、今は“子どもと一緒に楽しめるカフェ”に振り切っています。親子ヨガや子どもの手形・足形ワークショップなど親子で楽しめるイベントを午前中に実施し、そのあとに参加者がランチやお茶していくパターンも多いですね」と石田さんは話す。
この10月からアンケート結果を受けて、幼稚園や保育園帰りの親子などが使いやすいようカフェタイムを設け、15時クローズだったのを17時まで延長するなど、親子にうれしいカフェづくりは現在も進行中だ。

群成舎は家庭や企業が出す廃棄物の処理やリサイクル、食品残渣からの肥料や飼料づくり、小水力発電など広く環境保全事業に取り組んでいる。そのほとんどがBtoB事業であり生活者が同社の取り組みを知る機会は多くはない。
「弊社が運営するカフェとして、環境に関する現状や課題に関心をもってもらう、きっかけを生む場として、エコラボカフェの存在は重要です」と、石田さんは話す。
「お子さんの誕生をきっかけに、食や環境問題に興味をもつ方は多いです。私たちが意識的に変える、というより“子どものため自ら変わっていく”という、という能動的な姿勢を秘めた方が行動したくなるようなイベントを企画・開催しています」。
またカフェの食事に使用する野菜は農薬や除草剤などを使わず、環境に配慮した農家さんから直接仕入れている。さらに、農家さんの廃棄を減らすよう野菜の種類や量を指定せずに、その日に獲れた野菜をもってきてもらいメニューを決めている。メニューには、大豆ミートを使ったカレーなどのヴィーガンメニューや、グルテンフリーのチーズケーキなども取り揃える。
「身体への負担が少ない食材、オーガニック野菜やヴィーガン料理といった食に関心がある人が集まってきています」というのが石田さんの実感だ。この10月から販売開始したカフェタイム限定のデザートプレートに盛られた米粉のスコーンやソフトクリームなどは、すべて無添加・手作りのこだわりのメニューだ。

今年の5月には、余計な環境負荷をかけないよう、レジ袋や包装紙を使わないお買い物を楽しむ高崎ゼロウェイストマーケットを開催した。
「野菜やお米、パンにスイーツ、量り売りのグラノーラや生甘酒、ナッツやドライフルーツなどを扱うお店や農家さんに参加して頂きました。半日ほどの開催で265名のお客様が来場され、マイ容器やエコバッグを使った買い物を楽しみ、出店者さんも新しいお客様との会話を楽しんでいたようです」と石田さんはうれしそうだ。
10月にはエコラボカフェで回収した衣類を無料で開放する“おさがりいちば”や、12月にはゼロウェイストなクリスマスマーケットなど新しい企画を予定している。「今後もゼロウェイストをキーワードに色々な企画を進めています。一般の方にどうやって、ごみを出さない暮らし方やクリーンビジネスを、カッコいいこと・必要なことだと思ってもらうか。イベントや日々のエコラボカフェでの取り組みをSNSなども通じて広く知ってもらい、賛同する方を増やしていきたいです」と話す石田さん。地道な取り組みが徐々に広がっている。