2025.7.4
株式会社ソーシャルピース 係長 サービス管理責任者
若井紗織さん
大学卒業後、非常勤教員などを経て、社会福祉法人はるな郷に入社する。はるな郷の通所施設 “就労継続支援B型事業所みさと”が運営するベーカリーで15年ほど支援員として勤務した後、パン屋さんとして独立。2023年に4月に株式会社群成舎に入社し、株式会社ソーシャルピースの立ち上げに参加する。
・株式会社ソーシャルピース
群馬県で廃棄物のリサイクルや環境保全事業などを展開する株式会社群成舎。そのグループ企業である株式会社ソーシャルピースは、就労継続支援A型事業所を展開し、利用者は群成舎が運営するリサイクル工場やカフェで就労している。ソーシャルピースのサービス管理責任者、若井さんに話を聞いた。
「私たち株式会社ソーシャルピースは、就労継続支援A型事業所を運営する会社です。株式会社群成舎のグループ企業であり、グループ企業への一般就労の機会を利用者さんに用意できることが一番の特長です」と若井紗織さんは力強く話す。
一般的に就労継続支援A型事業所では、障害などにより一般就労が難しい人が職業訓練やビジネスマナ-を修得し、事業所に通い生活リズムを整えることで就労を目指す。
「利用者の施設外就労場所は主にグループ内のリサイクル工場やカフェなどです。これらを運営するグループ企業に利用者がそのまま一般就労することができれば、人間関係はある程度出来ていますし、仕事も覚えているため、継続した就労につなげやすいと思います」。
株式会社ソーシャルピースは2024年2月に設立され、群成舎が行う廃棄物の収集運搬やリサイクル事業といった環境保全事業と、就労継続支援A型という福祉サービスとを連携させる、環福連携モデルの企業だ。
福祉の仕事について若井さんはこう話す「福祉の現場では、様々な専門職が連携して利用者さんがより良く暮らせるように力を尽くします。例えば私は就労に関する範囲は支援しますが、そのほかの私生活については専門外なので、相談支援専門員さんに話を繋げることもあります。ある利用者さんは自宅ではなく障害者グループホームで暮らすことで、生活リズムが整い、一般就労へ繋がったケースもあります」。
「福祉の分野で働く方はみんな“やさしさ”を持っています。利用者さんの困りごとに対して、何とかしてあげたい、という思いをもってみんな仕事をしていると思います」。取材中に利用者の就労先から連絡が入ると、その度ごとに丁寧に対応する若井さんの姿が印象的だった。
“仕事にコミュニケーション能力は必要だと思いますか?”という思わずドキッとする問いかけに続いて、若井さんはこう話す。「私は仕事に必要なコミュニケーションができれば合格だと思っています。仕事中やお昼休みの雑談を、あらゆる人に求めるのは違うのではないでしょうか」。
ソーシャルピースの施設外就労先である碓氷エコファクトリー(群成舎が運営する産業廃棄物中間処理工場)では障害のある人もない人も昼休みにサッカーや野球をしているが、積極的に参加する人もいれば、それを眺めてニコニコしている人もおり、参加の強要もない、自由な雰囲気がある。
「ここには10年程前から群成舎の障害者雇用の枠で、障害のある方が二人働いています。障害を含めた様々な事情をもった人が一緒に働くという企業文化が根付いており、ソーシャルピースの利用者さんの一般就労につながりました」。
また、障害がある方が一緒に働くことで、オフィス内でのコミュニケーションやオフィス環境が改善するという面もある。「以前は碓氷エコファクトリーの工場内はかなり散らかっていたのですが、ソーシャルピースの利用者さんが通うにあたって、整理整頓の徹底をお願いしました。突発的な対応を苦手とする人もいるため、工具を収納する場所を決めたり、回収物が山積みにならないよう仕組みを作ったりと、仕事の効率化にもつながっています」。
2025年5月現在、ソーシャルピースには19名の利用者がいる。業務の中心は廃棄物の解体作業や、施設の清掃だ。「ほかにも群成舎が運営するカフェに勤務している利用者さんもいます。そこで働く利用者さんは“仕事が楽しくて休みの日がつらい”とこぼしています」と若井さんは嬉しそうに話す。カフェでは作業療法士の資格を持っている社員がおり、障害のある人がグループ内で多様な働き方が可能になるよう取り組みが行われている。
「ソーシャルピースでは、今後も個人の特性にあった働き方を模索していきます。できないことを叱るよりも、できることを見つけます。だから私は利用者の良いところを見つけたら全力で褒めるようにしていますよ!」と話す若井さん。障害を抱えつつ自立を目指す人の力になりたいと、利用者さんのことを考え続けている。