2024.8.9
群馬藤岡市と隣接する埼玉県神川町にあるヤマキ醸造は、国産有機大豆から醤油、味噌、豆腐づくりを続けている。明治35年創業の同社は、原料を育てる土づくりから取り組み、化学調味料や合成保存料などの添加物をほとんど使用せずに、昔ながらの木樽を使用した伝統の醸造法による味噌・醤油造りに取り組んでいる。
神川町の本社では様々な見学会や体験教室などのイベントを随時開催しており、今回はエコラボカフェで夏休み特別企画の出張イベントを開いた。
ヤマキ醸造
吉田頌(しょう)さん
1902(明治35)年創業のヤマキ醸造で営業を担当。映画と絵本とみそ汁が大好き。
「何が“発酵”で何が“腐敗”か、その違いは実はあいまいです。判断する人がどこで暮らしているか、何が好きかによっても変わることがあります」。
ヤマキ醸造の吉田頌さんの言葉に、会場の参加者は一瞬戸惑ったような表情を浮かべる。「その人にとって有益な菌の働きだったら発酵、不利益な働きだったら腐敗です。だから大豆に納豆菌が繁殖するのは、納豆が好きな人にとっては発酵、嫌いな人にとっては腐敗ともいえます」。
世界には多くの発酵食品があるが、基本的には細菌やカビ、酵母が食品のもととなる原材料を“細かく分解する”働きを利用している。有効な菌の働きとして、味わいや香り、栄養価の向上、保存性の向上などが挙げられる。例えば、茹でた大豆を放っておくと1週間で腐るところ、味噌に加工すれば1年を通して食べることができ、古くから保存食として活用されてきた。
「ヨーグルトやピザ、お寿司のお酢、アイスクリームのバニラビーンズもちいさな菌による発酵の力を利用しています。菌にも色々な種類があって、味噌や醤油なら糀菌、ヨーグルトなら乳酸菌、パンならイースト菌という菌が働いています」。身近な例を前に子どもたちは興味深そうに聞いていた。
「世界で一番くさい食べ物と言われているのが、ニシンの発酵食品であるスウェーデンのシュールストレミングです。これは飛行機に乗せ、気圧が下がると爆発して、とんでもなく臭い匂いが飛行機に付くため、飛行機で運ぶのは禁止されています」という話に、子どもも大人も一緒になって笑う場面もあり、和やかな雰囲気で座学は進んでいった。
座学のあとは、ヤマキ醸造の味噌や醤油を体験していく。まず吉田さんが持ち込んだ“醤油のもろみ”を、木製の絞り機をつかって醤油を絞っていく。
「やってみたい人~!!」と吉田さんが声をかけると、次々と手が挙がっていく。子ども同士、2、3人がチームになり、布で包まれたドロドロのもろみに絞り機で力をかけていく。ギュッと力を入れると、だんだんと見たことのある液体が染み出してくる。醤油だ。
その醤油を同じくヤマキ醸造のお豆腐にかけて食べた子どもたちは、おいしい、おいしいとおかわりをする子もいた。油揚げやミョウガ、きゅうりと豆腐を入れた冷たいお味噌汁である冷や汁も振舞われ、こちらもおかわりが止まらない。
群馬県内ではヤマキ醸造の商品は、スーパーまるおか、食の駅 吉岡店でのみ取り扱っている。また、ヤマキ醸造の本店では今回開催した醤油絞り体験だけでなく、豆腐作り体験や、自然農法体験なども開かれている。興味のある方はHPからも申し込みが可能なので、チェックしてみてほしい。(ヤマキ醸造のHPはこちらから。)