2022.6.7

脱炭素社会を目指す エネルギー自立分散型社会

講師/芝崎勝治(株式会社群成舎代表取締役社長)

次世代へバトンを繋ぐ、群成舎のクリーンエネルギー事業

昭和32年に創業して以来、常に”環境”を軸に事業を進めてきた『群成舎』。世界で脱炭素社会に向けた社会づくりが進む中、当社ではクリーンエネルギー事業として「小水力発電」の普及に努めています。

セミナーでは『群成舎』代表の芝崎勝治より、日本のエネルギー事情から考える脱炭素社会に向けた課題や、再生可能エネルギーがもたらす豊かさについてお話させていただきました。次世代の「エネルギー自立分散型社会」に向けた活動は、世界各地で進められています。一例として当社の小水力発電所の設計・施工事例をご紹介し、現在の日本の取り組みについて解説しました。

①脱炭素社会を目指す世界と日本のエネルギー事情

明治維新よりめざましい発展の歴史を歩んできた日本。世界三位の経済収支は年間15兆円に上り、我が国の豊かさを表しています。ところが、産油国からの化石燃料輸入額はそれを上回る年間20兆円。今後、少子高齢化が進み生産者人口の減少が予測される中、日本の豊かさを守るためには「エネルギー自給率」を高めていくことが重要です。

日本の電力需要は年間1兆キロワットですが、国内に眠る再生可能エネルギーのポテンシャルは7倍の7兆キロワットと言われています。再生可能エネルギーの循環、すなわち化石燃料からの脱却は、脱炭素社会の実現には欠かせない要素です。北極の氷が溶け、干ばつや台風などの自然災害が起こるなど、環境問題の脅威は身近に迫ってきています。”持続可能な開発目標”である「SDGs」にはいくつかの分野に分かれた目標が設定されていますが、「より良い社会づくり」や「より良い経済づくり」の実現には「より良い環境づくり」が必要不可欠です。私たちの生活の土台となる環境を守るために、水力、太陽光、地熱、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーの整備が急がれています。

②群成舎が提案する「小水力発電所」とは

当社の扱う小水力発電は「水の流れを利用して発電機を回す」というシンプルな原理で再生可能エネルギーを生み出します。川の流れの一部をヘッドタンクから発電所へ通す仕組みは、昔ながらの「水車」と同様、環境生物と共存しながら発電をすることが可能です。基本的に落差と流量のある水域であればどこでも発電することができ、一般の河川だけでなく、農業用水やダム、上水道を利用した発電所も設置事例があります。

現在、水資源の豊富な日本には多くの未開発地点が残されておりますが、気軽にどこでも発電できるというわけではありません。地図上で設置可能なポイントを絞り、ドローン測量や現地調査を通じて、環境に合わせた設備を選び設計していきます。発電所の地点開発から稼働まで3年、その後メンテナンスを通じて20年50年100年と長期間の発電をする事ができます。

富山県の事例では水力発電所の運用開始記念祝典に多くの地域の方がご出席くださいました。また、長野県の事例では発電所が観光地として賑わうなど、発電以外にも地域へ良い影響が出ています。鉄鋼業の盛んな町ではトンネルを掘る際に出る「トンネル湧水」を発電に利用し、雪深い地域では雪解け水を貯水し発電するという地域性を活かした事例もあります。白洲次郎は「電力なくして戦後の復興はない」「戊辰以来未だ貧しい東北に電源を開発し、復興を推進する」と只見川水系の水力開発に尽力しました。その白洲の言葉通り、再生可能エネルギー事業は地域と共にあることを強く感じています。

③「自然を守り、笑顔を繋ぐ」地域で循環するエネルギーがつくる未来

横浜市のみなとみらい21地区では「2030年までにCO2を実質ゼロにする」という宣言が出され、再生可能エネルギーに注目しています。近年ではSBT(Science Based Targets:パリ協定に準じた企業の温室効果ガス排出削減目標)を意識し、製造から販売、消費に至るまでのエネルギー削減を進める大企業も増えてきました。

各地で進む小水力発電は、社会全体の再生可能エネルギーの供給を支える大きな力になると考えています。一つ一つは小さな発電量でも、それらを束ねて“一つの発電所のように”電力供給を行う仮想発電所(VPP:Virtual Power Plant)の構築が進められていくでしょう。

また、天候変化や昼夜を問わず安定的な発電ができる水力発電の強みは、今後予測される南海トラフ地震などの災害も見据えた、いざという時のインフラとしても整備していくことが大切です。災害時に備えたマイクログリッド化(普段利用している再生可能エネルギーを、非常時には独立したエネルギー循環として地域で消費する送配電の仕組み)も進めながら、地域の暮らしを安全で豊かなものにする電力として再生可能エネルギーを整備していきたいと思います。

小水力発電は川に流れる水を利用した環境に優しい発電方法です。その仕組みを支えるのは豊かな自然がある中山間地域。再生可能エネルギーの輪を広げていくことは、水資源の豊富な群馬県を始めとする、地方自治体の新たな力に繋がるのではないでしょうか。再生可能エネルギーによって中山間地域の振興を支え、日本全体が豊かになる取り組みを進めていきたいと思います。

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