2021.11.5
IRM
IRM株式会社は、スーパーや工場で排出された食品廃棄物を収集し、飼料に加工する食品リサイクル飼料製造工場です。リサイクル飼料を使って、畜産家が家畜を育て、その家畜を地元で消費する全国初のリサイクルプロジェクト「すまいるーぷ協議会」。その一翼をIRMが担っています。IRMの食品リサイクルの仕組みについて臼田信加寿部長を取材。
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すまいるーぷ協議会
一般社団法人ぐんま食品リサイクルすまいるーぷ協議会は、地域の食品関連事業者(ホテル・スーパー)、飼料・肥料製造事業者、農畜産事業者、高崎経済大学が連携した全国初の食品リサイクルプロジェクト。
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日本の食料自給率は現在約39%で、大半を輸入に頼っており、主な先進国の中で最も低い水準です。その一方で、年間2,531万トン(平成30年農水省・環境省)の食品廃棄物が出され、いわゆる食品ロスについては国民一人当たりに換算すると、一日当たり茶碗約1杯になると試算される。また廃棄される食品の焼却時に排出されるCO2の削減も重要。
大切な資源の有効活用、環境負荷の低減のために、食品ロスを減らすとともに、発生した食品廃棄物のリサイクルが重要となっている。
食品リサイクルの方法には、大きく飼料化、肥料化、燃料化の3分野がある。このうち飼料化と肥料化は食料自給率の向上につながる。
国は食品リサイクル法を定めて食品循環資源の再生利用の促進を図り、再生利用等の実施率を食品製造業は95%、食品卸売業は55%、外食産業は50%を2024年度までに各業界として達成するように求めている。この数字は業界の目標値であり、全国展開する大手スーパーなどにより取り組まれている。しかし地域の小規模な事業者には負担が大きく、取り組みは余り進んでいないのが現状。
地域企業の連携によって、食品廃棄物の収集・飼料化・畜産・消費までを循環するネットワークは「すまいるーぷ協議会」が全国唯一の存在。「地産地消のリサイクルの実現に取り組んでいる」と臼田部長。排出された食品廃棄物を飼料や肥料に加工して、野菜や家畜を育て、循環させるモデルを「地域」でつくりあげていくことが求められている。
土壌中で分解される肥料に比べ、家畜が食べるリサイクル飼料の製造では、原料などに厳しいルールが設けられている。以前、牛海綿状脳症(BSE)が世界的な問題となり、牛や豚などに与える飼料については、動物由来のタンパク質が含まれないよう徹底した管理が必要。「リサイクル飼料はハードルが高い事業です」と臼田部長は指摘。
地域のスーパーや百貨店・工場・給食センターと提携し、野菜や余剰パン、麺類を新鮮な状態で収集し、乾燥飼料に加工。収集には衛生面にも配慮した専用車両を使用。
原料に使用するのは野菜だけで、排出元のスーパー等に依頼し、動物由来の食材のみならず肉等に接触した野菜も混入しないように配慮している。
飼料は家畜の成長や品質を左右する。生育環境を始め、飼料の種類や与え方は農家によってしっかりと管理されているので、リサイクル飼料も農家の要望、ニーズに応じた対応が必要。またリサイクル飼料に対する法的な基準も年々厳しくなっている。スーパーや百貨店で発生する野菜くずは、季節によって種類が違ってくるので、乾燥工程などに影響する。「当社の工場は最初から高い基準に対応した設備で製品化している」と臼田部長。
「環境やリサイクル、食の安心安全に関心が高まっている。安全な食材を提供するためには生産段階から取り組みを行うことが重要」と臼田部長は考える。
リサイクル飼料で生育した豚は、「すまいるーぷ」ブランドとしてスーパーの専用コーナーで販売され、食材として利用したいという飲食店の参加要望も高まっている。
「飼料の9割は輸入。少しでも国産比率を高めることが必要。農家の経営環境も厳しく、コスト面でも農家の役に立つ製品を提供していきたい。今後は製造過程でのCO2削減を」と臼田部長はリサイクル飼料と向き合っている。